『21世紀メディア論』読んだ

 

21世紀メディア論 (放送大学大学院教材)

21世紀メディア論 (放送大学大学院教材)

 

  ※私が読んだのは2011年に発行された初版なので、上に貼った改訂版とは内容がそこそこ違うかもしれない。恐らくだいぶ違う。

 

 放送大学でのメディア論に関する講義の教科書。といってもこの本単体で読める。放送大学の映像講義を参照する必要はない。

 

 本書前半、20世紀までのメディア論を概観する部分は他の類書とあまり違いはない。後半が少し面白い。筆者は21世紀においてメディアを正しく理解するには、メディアの実践が不可欠だと訴える。メディアの実践ってなんじゃらほいという話だが、本書にはたくさんのWS(ワークショップ)の例が出ている。例えば筆者が武蔵大学の講義で実施したあるワークショップでは、筆者の研究室に所属するスペイン人留学生が引っ張ってこられて、スペインでのケータイ事情について話をする。ここまでは普通の講義と一緒だが、この回で学生に課されるレポートは、「講義の様子をケータイで写メって、短い文章をくっつけて教授にメールすること」。ミニ新聞記者である。受講生が撮る写真がさまざまであったというのも面白い。話している留学生を撮るのはもちろんのこと、皆がケータイを構える教室全体の写真を撮ったり、ケータイを構えている隣の人の写真を撮ったり。メディアにおける言説生成に自分がチャレンジすることで、メディアへの理解を深める。これがメディアの実践である。

 

 一つ注意事項。この本後半の内容は主に筆者が研究として主導的にやっていることなので、良く言えばチャレンジング、悪く言えば未完成の体系である。それぞれの概念の有効射程が曖昧で、全体的に議論がもわもわしている感じを受けた。要するに、「レポート書くためにメディア論の基礎文献欲しいなア~」という人にはこの本はオススメしない。後半の概念を議論の前提にすると恐らく墓穴を掘る。あなたが非常に優秀で筆者の議論を補完しつつレポートに援用できるなら話は別だが。

 メディア論の基礎文献としてはこっち↓がオススメ。

 

メディア文化論 --メディアを学ぶ人のための15話 改訂版 (有斐閣アルマ)